こんにちは。今年に入ってから巨匠と呼ばれる音楽家が続々とお亡くなりになっています。小澤征爾、ポリーニ、フジコヘミング、と続いています。クラシック界の宝がどんどんいなくなってしまうのは非常に残念ですが、ちゃんと次世代も育ってるので、こうやって音楽は紡がれていくのだなあと厳かな気持ちになります。
特に幅広い年代に影響力があったのは、フジコヘミングでしたね。名前を知らなくても、「ラ・カンパネラ」といわれると、あーあー、あれね!と思い出す人は多いんじゃないかしら。カンパネラって、「鐘」って意味なのです。現代日本人にはさして馴染みのない鐘ですが、音楽的にはよく題材にされがちです。特にリスト。鐘、好き。
YouTubeなんかでも「11歳がカンパネラを!」「素人が何時間もかけてカンパネラを!」なんて動画をよく見ます。みんな鐘好きですね~。確かに魅力的な曲なのは間違いないです。でもね。安易に弾きたいってみんな言い過ぎなんですよ!!!
だって、楽譜見てみて
こんなんですよ?まずオクターブは余裕でとどかないといけないし、音符なんてほぼありんこみたいじゃない。
こんなのがずっと続くわけです。それを涼しい顔して情感たっぷりに、すんごい速さで、弾くのです。
そうなるにはどうしたらいいか知ってますか?とにかく山ほど練習ですよ。それしかない。一日1時間弾いた程度では話になりません。毎日何時間もいろんな曲を、様々な方向から比較検討して、何年も勉強してようやく入口に立てるかどうかです。厳しいことをいうようですが、ピアノってそんなにインスタントじゃないんですよ。指使いなおしてきてね、〇回練習してきてね、って言われるレベルではもう無理。そのくらいで「ラ・カンパネラ弾きたいです。私いつひけますか?」って聞かないで下さい。いつかひけるといいね、ただ今の状態では一生無理かもね、としか言えません。やりたいと思うならそれ相応の努力が必要です。経験上、だいたいこのペースで進んでいてそのまま進むのならこのくらいのレヴェルになるよねって見通しはつきます。たまに突然やる気になってハイペースになる場合もありますが、そういう喜ばしいケースは多くはありません。ぜひそういうケースになってほしいと思います。「講師の指導力不足なのでは?」ともいわれそうですが、指導力うんぬんくらいでどうにかなるほど簡単ではないのです。誰がどう聞いても難曲です。また、電子ピアノでラ・カンパネラは私には指導できません。基本的に電子ピアノは構造が違うのです。
天才的だから動画で人気になるんですよ。天才って珍しいんですよ。誰でもなれるわけではないのです。ちょろっとピアノ習ったよ、くらいで「ラ・カンパネラを弾くのはかなり厳しいこと」という事実に必要以上に傷つかないで下さい。あと2年くらいで弾けますか、動画では11歳くらいの子がひいてたから11歳になったらできるかな、なんて質問が多くて本当に困ります。私には今のままで特段不都合がありそうには思えないし、でももっと伸びてほしいから引っ張るけども、進捗を見る限りうそになるような、「きっとあなたにもいつか弾ける日がくるよ」なんて希望的観測は言えません。まずは裏付けになるだけの練習が必要なのです。
憧れの作品があるのは素晴らしいことです。好きな曲をたくさん聴くのはいいことです。
ラ・カンパネラ身近すぎ問題、でした。